東京（というか関東）へ来て驚いたことはたくさんありますが、自分の中で一番驚いたことといえば「うな重」のおいしさのように思います。
名古屋といえば、ご当地名物「ひつまぶし」が幅を利かせている地域です。名古屋、広くいえば愛知県の至る所に鰻屋さんがあります。基本はひつまぶし、もちろんうな重も普通にメニューとしてあり、どこのお店もそれなりに繁盛しているわけです。
わたしは生粋の名古屋人なので、うなぎを食べる機会は人より多かったんじゃないかなと思います。代表格であるあつた蓬莱軒はもちろん、中堅どころや、知る人ぞ知る小さなお店など、色々なお店に行きました。いや、正しくは連れて行かれました。名古屋人の中でも、特に老人は鰻が大好き。名古屋の幼児たちは、祖父に連れられて鰻屋へ行くのです。
そういうわけで、名古屋で飽きるほどうなぎを食べた私は思いました。まあ、うなぎっておいしいけどね。他においしいものはいっぱいあるし、どちらかというと味噌煮込みの方が好きだな……。
そういうスタンスで東京へやってきて、あるタイミングで神楽坂の鰻屋さんへ行きました。うなぎが食べたいという友人に付き合ってのことです。そしたら……あれ？ これおいしくない？ 何？ どういうこと？ おいしい……え？
目の前のうな重は、明らかに名古屋のそれと違いました。でも産地がわかるような繊細な舌じゃなし……。向かいの友人に「なんかこれ、名古屋のうなぎと違うんだけど」と尋ねると、明朗な答えが返ってきました。
「蒸してあるからね」
なんじゃそら、と思い詳しく聞くと、うなぎには大きく2種類の焼き方があるとのこと。
主に関西では「生→焼く」、関東では「生→蒸す→焼く」。東西で蒸す工程があるかないか分かれるんだそう（他にも背開き腹開きなどあるそうですが割愛）。
私の住んでいた名古屋は、関西寄りの焼き方が主流。蒸す工程を入れずに焼いているお店が多く、思い返せばカリッ（たまに通り越してガリッ）とした仕上がりになっていることが多かったです。そして東京のうなぎは蒸す工程が入っているので、ふんわりした仕上がりになっているとのこと。
そんなもん名古屋も蒸せよ。そう思わずにはいられない関東のうなぎのおいしさ。これは完全に好みの話なのですが、ま〜おいしかった。これでいいじゃん。なんで蒸さないの。これが正解だろ。
それから、都内はもちろん、関東全域の鰻屋さんへ行ったのですが、やっぱりふわふわでおいしい。絶対蒸した方がいいって。川越の鰻なんか本当においしかった。
でも逆にいえば、カリッと焼いてある方がひつまぶしには向いている気がするので、ひつまぶし特化であるならば、焼きだけで終わらせるのはあながち間違いでもないような気もします。鰻重なら蒸した方がいいと思うけど……。
名古屋（もしくは関西）の方で、うなぎのおいしさにやや疑念を抱いている方はぜひ関東のうなぎを食べてみてください。案外ハマるかもしれません。
言いっぱなしではあれなので、個人的におすすめしている都内の鰻屋さんを紹介します。
これぞ鰻屋！ という感じのお店なら、江戸川橋の「はし本」。
正統派の関東風で、店構えも古く、地元民に愛されている老舗の鰻屋さんにいきたい人にはぴったりです。ただアクセスが悪いので普段はあまり使ってないかも。
個人的によく使うのは、神楽坂の「志満金」。アクセスがいいのと、口取りやお椀、デザートなどがついたコース仕立てのお料理があるので、うなぎガチ勢の人じゃなくても連れて行きやすいです。鰻屋というより、うなぎ割烹。写真はないので公式サイトを見てください。
あと一番アクセスがよく、雑に使える穴場が新宿高島屋の「赤坂 ふきぬき」。
平日昼限定のひつまぶしランチが2500円なので、ひとりでだらっとご飯を食べたいときに使っています。平日の昼だとひとり客が多く、ちょっと高めのてんやみたいな空気になっているときがあって面白いです。最近お店の前に「うなぎは外国産です」みたいなポスターが貼ってあったので、正統派を求める方はウ〜ンかもしれませんが、わたしはそこまで求めてないので十分です。
以上、関東のうなぎを通じて「名古屋にいるだけじゃわかんないことってあるな〜」と思った話でした。
思えば、東京では名古屋人に会うことがほとんどなく、前の会社でも今の会社でも、名古屋の人に会ったことはありません。愛知県は自県進学率が全国でもトップクラスで（なんかの資料だと1位だったような）、とにかく外に出て行かないので、東京で名古屋人に会えるのは本当に稀なんだろうなあと思います。
名大もあるし、トヨタもあるし、外に出る意味ないもんね。人生は名古屋でいいんだよ。私だって、名工大卒で豊田織機あたりに入社した理系の男と付き合って結婚して豊田市の家賃8万の2LDKに住んで週末は鞍ヶ池公園でデカいオウム見て2歳の子供に「みて！ 鳥さんだよ〜かっこいいね〜！」と話しかける人生を送る予定でした。
そういう人生設計があったにもかかわらず、なぜ東京へ来たかというと、転職で……やりたいことがあって……とかっこつけて言うようにしていますが、本当のところは好きな男が東京へ行くというのでくっついて上京しただけです。最悪。かっこ悪いのであまり言っていません。この10年弱ひた隠しにしていて初めて言いました。逆に聞くけど、20歳そこそこの女にとって恋より大事なもんある？ ないだろ。名古屋人で上京する女は才能がありすぎたか恋に狂ってたかのどっちかなんだよ。バーカ。西野カナ聞け。
今年の猛暑もうなぎを食べて元気に乗り切りたいと思います。
