映画「首」個人的な感想

先日、Xのタイムラインに“侍と侍が口を血塗れにしながらキスしているFA”が流れてきたので、へ〜北野映画にもこういう系のオタクって湧くんだ、と思っていたら「本当に、します‼️」との注釈があり、えっそういう感じの映画なの? とクチコミを調べてみると「血塗れキス」とセットで「刀フェラ」が投稿されているのに気づきました。へ〜、ふ〜ん。

まあさ、人に生まれたからには、侍が刀フェラして血塗れになるところ、観たいよね……と思い、TOHOシネマズ 新宿へ行ってきました。

観る前は、男道があるって言っても耽美の方面かな? と思っていたんですが、全然違いました。全体的にすげ〜汚くて、すげ〜無様だった。戦国モノってだいたい役も話もキラキラなので新鮮でした。

特に、加瀬亮さんの演じる織田信長がかなりキモくてよかったです。このキモさについては、監督もインタビューの中で「小男というか普通の大きさのヤツがいじめる狂気ってのはけっこう画になって面白かった(引用 映画.com)」と言っているんですが、加瀬亮さんってとにかく細いんですよね。織田信長の着物は襟ががばっと開いているんですが、そこから見える胸元が薄くて、どうにも印象がひょろい。そういう奴が尾張弁でイキるとかなりキモくて、コイツまじで終わってんな……感がすごく、他のコンテンツでよく目にするカリスマ的で大柄な織田信長というよりは、どこか不安定な感じの狂人でよかったです。才能はあるが問題もあるメンヘラおじさん。名古屋人としてのルーツを感じました。

そういうメンヘラおじさんが冒頭10分(ぐらいだったよね?)、遠藤憲さん一扮する荒木村重に刀フェラ強要からの血塗れキスをぶちかますのでヒィ〜〜😭 とひとりで震え上がってしまいました。こんなんパパ活だよ〜😭 みんな逃げて〜😭 早く本能寺燃やして〜😭(燃やした)

首の織田信長に対して負のイメージがかなり強いのは、コテコテの尾張弁だからかもしれません。いま名古屋であのレベルの尾張弁を話す老人達は恐ろしく見え張りで、厄介で……。そういう名古屋生まれとしてのトラウマが首の織田信長に結び付けられてしまっている気がします。首の織田信長はやや三河弁な気もしたんですが、徳川の前は尾張も三河弁だったという話を聞いたことがある気がするので間違ってはないかも。若干イントネーションの怪しさも感じましたが、ネイティブじゃないのにあそこまで仕上げたのはすごい。

「首」自体のテーマはおそらく「侍としての覚悟とか、見栄とか、そういうのダサいよね(笑)」と従来の美しき侍道を一蹴しちゃうところにあるんだろうなという感じだったので、ラストラムライみたいなハリウッド系映画が好きな人はウ〜ン? となるだろうなとは思いましたが、監督が「こういうのやりたいんだよね〜(笑)」と楽しんで作ってる感じがしてよかったです。

俳優さんは全員文句なしに素晴らしく、その上で群を抜いていたのは中村獅童さん扮する難波茂助だと思いました。あれすっごくなかったですか? めっちゃナチュラルで、狂気が狂気じみてなくて、素直で……。中村獅童スゲ〜。マジですごかった。北野映画あんまり合わないんだよな〜という人も中村獅童のために観に行っていいと思うレベル。

首は飛びまくるし、血も出まくるけど、画をグロくしたいというよりは、首を飛ばすっていう行動の方に意図があるので、そんなにグロい印象もなく、人の日記を見ているようなのんびり感で観ることができました。

他人にオススメするかといったらしないけど(合う合わないがあるので)、こういう映画があるというのは一定の人にとって救いだろうなと思いました。よかったです。

朗らかな暮らし